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「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ーアレルギーにまつわるエトセトラ(1)ー

[2024.04.30]

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず。彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆うし」とは、言わずと知れた孫子(孫武・孫臏)の兵法の一節である。インターネット社会で情報の溢れる今の時代、真偽の不確かな情報も多く、中には人を混乱させるためにわざと流される情報、フェイクニュースも少なくない。噂話やゴシップネタならともかく、身近な健康・医療に関することでも、真しやかに誤った情報が流布、拡散されていることもある。コロナ後には少し意味をはき違えた「エビデンス」という言葉が連呼され、よく耳にするようになったのは、何とも皮肉なことである。今後、ますます加速し進化する情報化社会において、取り扱う情報量は増え、情報の取捨選択が求められ、情報の質や信頼度が一層問われていくようになるだろう。医療分野にもRobotやAIが導入され、DX(Digital Transformation)化が進むことにより、ある意味「医療」とは「医療情報」となりつつある。医療における「患者情報」は究極の「一次情報」であるが、その基本情報の1つに「アレルギー情報」がある。「アレルギー情報」は自己の経験に基づいた信頼性の高い情報ではあるが、問診や受診時の診察所見では何がアレルギーの原因か不明なことも少なくない。実際に「アレルギーの原因を知りたい」と検査を希望される方は多い。その際、スクリーニング目的で勧めているのは、特異的IgE(RAST:RadioAllergoSorbent Test) View アレルギー 39 である。アレルゲンの個別選択はできないが、少量の採血で一度にアレルゲン39項目の検査結果をIndex 値とClass(0~6のうち3以上が陽性)で表示する半定量検査であり、学童期以降のアレルギー性皮膚炎の方、アレルギー性鼻炎・気管支喘息・アトピー性皮膚炎など複数のアレルギー性疾患を合併している方、花粉関連食物アレルギー症候群(PFS:Pollen-Food allergy Syndrome)の合併が疑われるアレルギー性鼻炎の方により有用である。アレルギー症状がなく治療適応のない方は保険適応外で自費にはなるが、「彼を知り己を知れば」と確認しておく価値(費用対効果)は大きいかもしれない。
花粉症患者は国内で約3000万人(令和4年)が罹患する日本で最も多いアレルギー疾患であり、現在も患者数は増加し続けていると言う。平成26年にアレルギー疾患対策基本法が成立、公布され、花粉症の影響は個人のみにとどまらず、国家・社会的損失も多大とされ、花粉症対策は今や国策となりつつある。まずは自身のアレルゲンを同定し、花粉飛散情報に関心を持つだけでも「百戦殆うからず」とまではいかないか。果たして孫子がいたら何と言うだろうか。ちなみに、高度情報化社会の現代における危機管理においては、己(汝自身)を知れば、危機管理の半分は終わっており、準備はO.K.というのが世界の常識である。次回、機会があれば、アレルゲン免疫療法(減感作療法)の一種である舌下免疫療法などの治療法についても触れてみたい。

花粉関連食物アレルギー症候群(PFS)とは花粉症に合併することが多い食物アレルギーで、口腔粘膜を中心に比較的軽微な症状を発現することから、口腔アレルギー症候群(OAS:Oral Allergy Syndrome)とも呼ばれている。中には、アナフィラキシーショックを起こすこともあると言う。

インターネット上に流通する真偽の不確かな情報(総務省)

みんなのアレルギー情報室(Thermo Fisher SCIENTIFIC)

アレルギー疾患対策基本法とはどういう法律なのか(日本アレルギー学会)

スギ・ヒノキ花粉情報(ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック)

2024年 花粉情報(エスエス製薬)

トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ(鳥居薬品)

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